🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
 慌てて会社に戻って、海利社長と嘉門部長に差波木社長との面談結果を報告した。

「天然モノを主体とした大規模鮮魚店が首都圏に100か所か……」

 部長は一瞬驚いたような表情を見せたが、彼の営業脳が頭の中の計算機をフル回転させているようだった。

「それで?」

「仕入れに協力させていただきたいと申し込んだら、『前向きに検討したい』と快いお返事をいただきました」

「そうか」

「はい。海利社長の会社なら信頼できると言われていました。日本漁業の未来研究会でのご発言に感服されたようでした」

 すると社長が少し照れたような笑みを浮かべて、「君たちのお陰だよ。私は君たちの提言をそのまま言っただけだからね」と謙遜した。
 それを聞いて、手柄を社員に渡す社長が素敵だと思った。
 この人のためなら頑張れるとも思った。
 しかし、次の瞬間、社長の顔が引き締まり、「でも、これからが大変だな」と部長に話を振った。
 
「そうですね。天然モノの確保は簡単ではありませんから」

 部長の顔からも笑みが消えたが、却ってそれで心が決まった。
 会社に帰る道すがら考えていたことを2人にぶつけた。
 
「アラスカへ行かせてください」

「えっ?!」

 社長と部長が同時にのけ反った。


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