🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
「おはようございます」

 オフィスに入ってすぐに部長席を見ると、既に座っていた。
 それだけでなく機嫌の悪そうな顔をしていた。
 それはそうだ。
 アラスカから送った報告書は最悪なのだ。
 機嫌がいいわけがない。
 テンションはマイナス200になった。
 
 席に荷物を置き、室内履きに履き替え、パソコンを立ち上げてから部長席に向かった。

「申し訳ありませんでした」

 わざと蚊の泣くような声にして謝ったが、部長は何も言わなかった。
 言葉のゲンコツが飛んでくると思っていたのに叱責されることはなかった。
 出発前の(げき)はなんだったのだろうか? 
 (きつね)につままれたような気分になった。
 
 その日はなんの変化もなく終業時間を迎えた。
 室内履きのまま会社を出て、時々利用している駅の靴修理店へハイヒールを持っていくと、ヒールブロックの交換を勧められた。
 修理代が4,000円で3日掛かると言われた。
 給料日前なので痛かったが、他に選択肢がないので代金を払って預かり書を受け取った。
 
 財布の中には2,000円しか残っていなかった。
 明日と明後日の昼食はカップ麺しか選択肢がなくなったが、それでも〈むしゃくしゃ〉が増していて駄菓子を買うことを止めることはできなかった。
 夕食後に自室でバリバリ食べ続けて解消しようとしたが、そんなことで消えることはなかった。
 その上、食べ過ぎたせいかお腹が気持ち悪くてなかなか寝付けず、七転八倒した。
 
 やっと眠れたと思ったら痴漢されている夢を見た。
〈ヤメテー!〉と叫んだ瞬間目が覚めたが、パジャマは汗びっしょりだった。
 テンションはマイナス1,000になった。
 
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