🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
「そろそろ行きましょうか」
時計の針は10時を指していた。
女将と仲居さんに見送られて店の外に出ると、タクシーではなくハイヤーが待っていた。
乗り込むと、皮張りのシートが高級感を醸し出していて、そのせいか、ちょっと緊張した。
かつて一度もこんな高級車に乗ったことがなかった。
だから背中をシートに付けることができなかった。
膝を揃えて、その上に手を置いたまま、畏まった姿勢を崩せなかった。
でも嬉しかった。
落ち着いたお店、おいしい料理、心地よいバーラウンジ、ゆったりと流れる時間、そして、ゴージャスな高級車、女性に対する最高のもてなしに心が震えないわけがなかった。
こんな素敵な演出をしてくれる差波木を改めて素敵だと思った。
車の中で会話はなかったが、それは心地良い沈黙だと感じた。
ハイヤーは首都高新宿線を西に向かって走っていた。
走り去る景色をぼんやりと見つめていると、ふと窓に映る何かに気がついた。
差波木だった。
彼が横顔を見つめていた。
でも気づかない振りをして景色に視線を戻した。
あっ、
彼の右手が左手に触れた。
しかし手を握ることもなくただ触れているだけだったので、無理に意思を押しつけない彼の右手を拒否することはできなかった。
首都高を降りて家の近くで止まるまで彼の体温を感じ続けた。
時計の針は10時を指していた。
女将と仲居さんに見送られて店の外に出ると、タクシーではなくハイヤーが待っていた。
乗り込むと、皮張りのシートが高級感を醸し出していて、そのせいか、ちょっと緊張した。
かつて一度もこんな高級車に乗ったことがなかった。
だから背中をシートに付けることができなかった。
膝を揃えて、その上に手を置いたまま、畏まった姿勢を崩せなかった。
でも嬉しかった。
落ち着いたお店、おいしい料理、心地よいバーラウンジ、ゆったりと流れる時間、そして、ゴージャスな高級車、女性に対する最高のもてなしに心が震えないわけがなかった。
こんな素敵な演出をしてくれる差波木を改めて素敵だと思った。
車の中で会話はなかったが、それは心地良い沈黙だと感じた。
ハイヤーは首都高新宿線を西に向かって走っていた。
走り去る景色をぼんやりと見つめていると、ふと窓に映る何かに気がついた。
差波木だった。
彼が横顔を見つめていた。
でも気づかない振りをして景色に視線を戻した。
あっ、
彼の右手が左手に触れた。
しかし手を握ることもなくただ触れているだけだったので、無理に意思を押しつけない彼の右手を拒否することはできなかった。
首都高を降りて家の近くで止まるまで彼の体温を感じ続けた。