🌊 海の未来 🌊 ~新編集版~
 車が止まって、運転手がドアを開けた。
 
 先に降りた彼がエスコートしてくれた。
 彼は運転手が席に戻るのを見届けてからこちらを向いた。
 
「また誘ってもいいですか?」

 はにかむ彼を応援するかのように、月の光が彼の横顔を魅力的に浮かび上がらせた。
 
「ありがとうございます」

 軽く頭を下げてその場を辞そうとすると、箱が入った細長い紙袋を差し出した。
 
「あなたへの気持ちが入っています」

 差波木の真剣な視線が突き刺さってきた。
 その瞬間、時間が止まった。
 静寂の中で心臓が早鐘を打ち出した。
 どうしていいかわからなくなっていると、彼が紙袋を近づけた。
 ハッとして受け取ろうとした瞬間、引き寄せられ、抱きしめられた。
 そして耳元で囁かれた。
 
「美久さん……」

 その瞬間、力が抜けた。
 体を預けるしかなかった。
 唇が触れるのを感じながら誘惑の時の流れに身を任せた。
 
 ハイヤーを見送ったあと、玄関のドアを開けて、〈ただいま〉とだけ言って2階に上がった。
 そして、部屋で包装紙を丁寧に剥がして、箱を開けた。
 
 お酒だった。

 あのお酒だった。

 永遠の誓い。
 
 プロポーズ……、

 その言葉に支配されると、差波木の顔と海野の顔が交互に浮かんでは消えた。

 眠れない夜になりそうだった。


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