愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます
第1章 魔王様と私-1
第1章 魔王様と私
「すまないねぇ、ジーナ」
「運がよければ、生きて帰ってこられるだろうよ」
「変に期待させるんじゃないよ。そんな娘は一人だっていやしなかったじゃないか」
遠ざかっていく、里の人たちの声。私は、魔王様に捧げられた生贄。里を一望できる山の頂上に作られた祭壇の前で、じっと待つ。
私が生まれ育った里では、十五年前まで、一年に一人ずつ生贄を捧げていた。その年に十八を迎える乙女の中で、いまだ純潔を保っている者。それを魔王様への供物とすれば、引き換えに豊作に恵まれる。天災も飢饉も、すぐさまおさまる。そう信じられてきた。
娘たちはこの風習を恐れ、先を争って婚姻を結んだ。でも、大抵誰かしらは残っていて、その子が犠牲になる。夜に山に置き去りにし、朝になれば姿はない。どこへ連れ去られたのか、知る者はない。
十五年間、風習が途切れていたのは、生贄にされるくらいならと子を作る者が減ってしまい、里の存亡と天秤にかけた結果だという。幸い、この十五年の間は何事もなく、特別に豊かとは言えなくても人々はそれなりに生を謳歌していた。
今年、生贄の風習が復活したのは、雨が少なくて作物の出来が悪かったから。条件を満たす乙女は、私一人。断る術はなかった。
「すまないねぇ、ジーナ」
「運がよければ、生きて帰ってこられるだろうよ」
「変に期待させるんじゃないよ。そんな娘は一人だっていやしなかったじゃないか」
遠ざかっていく、里の人たちの声。私は、魔王様に捧げられた生贄。里を一望できる山の頂上に作られた祭壇の前で、じっと待つ。
私が生まれ育った里では、十五年前まで、一年に一人ずつ生贄を捧げていた。その年に十八を迎える乙女の中で、いまだ純潔を保っている者。それを魔王様への供物とすれば、引き換えに豊作に恵まれる。天災も飢饉も、すぐさまおさまる。そう信じられてきた。
娘たちはこの風習を恐れ、先を争って婚姻を結んだ。でも、大抵誰かしらは残っていて、その子が犠牲になる。夜に山に置き去りにし、朝になれば姿はない。どこへ連れ去られたのか、知る者はない。
十五年間、風習が途切れていたのは、生贄にされるくらいならと子を作る者が減ってしまい、里の存亡と天秤にかけた結果だという。幸い、この十五年の間は何事もなく、特別に豊かとは言えなくても人々はそれなりに生を謳歌していた。
今年、生贄の風習が復活したのは、雨が少なくて作物の出来が悪かったから。条件を満たす乙女は、私一人。断る術はなかった。