愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第1章 魔王様と私-10

 三日間、体が慣れていないせいもあって、ほとんどをベッドで過ごした。四日目からは、頭も体もすっきりして、身軽に動けるようになった。魔王様が私に、魔界に馴染めるだけの適応力というか、そういうものを分けてくれたのかもしれない。ああいう方法によって。それを言ってみたら、「確かにそれもあるが、行為の意味はそれだけではない」という返事だった。考え込む私の髪を撫でて、「図書館も庭もある。自由に過ごしていろ」って、また甘やかす。本は大好きだから、図書館は嬉しい。庭仕事も好き。とはいえ、ちょっと不安。
「魔界の本が私に読めるでしょうか。植物も、人間の世界とは育て方が違うのでは」
「俺と交わったことで、その程度の知識は身についている。それにお前はここの女主人だ。植物だろうが使用人だろうが、言うことをきかないはずがあるまい」
「そういうものなんでしょうか……」
 曖昧に答えたのは、「交わった」が恥ずかしかったから。
「試してみるといい。だが、魔物には近付くな。姿は人の世の動物たちに近くても、噛みつかれただけで命を落とす。奴らは自分の身を守るため、猛毒を体内に蓄えているのでな」
 それは本当に気を付けないといけないことだけど、なるほど、と感心した。魔物って、ただ怖いだけの存在ではないんだ。ちゃんと、理由がある。それを分かりやすく伝えてくれる魔王様も、今はちっとも怖くない。
< 10 / 40 >

この作品をシェア

pagetop