愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第1章 魔王様と私-12

 何かに目隠しをされているかのような膠着状態から抜け出したくて、ボニーさんに声をかけてみた。
「皆の邪魔をせずに、私がお手伝いできることは、何かない?」
「まあとんでもございません、奥方様!」
「お願い。体を動かすのって好きなの。ね?」
「さあて……どうしたものかしら」
「いいんじゃないか?」
 通りかかったのは、私にとことん甘い魔王様。
「一人、ケガで休んでいるんだろう? その間だけでも何かさせてやってくれ」
「まあ、そういうことでしたら……」
 あとは任せる、と言って立ち去った魔王様は、私の頬をするりと撫でていった。恥ずかしい……。
 ボニーさんは、とても温かい目で彼の背中を見送り、私にも優しく頷いた。
「お幸せそうで、本当によかったこと。さて、では、そうですわねぇ……。休んでいるグッタの様子を見に行っていただくというのは、いかがでしょう? あの子は奥方様を大層慕っておりますから、お顔を見れば元気になるかと」
「それなら、今からさっそく行ってみるわ」
「明日の方がよろしいかと。そろそろ魔物が活発になる時間ですから。一か所だけ、魔物の森の近くを通る道がありますので。あの子がケガをした原因も、飛び出してきた魔物に驚いたせいなんですよ」
「そんなに近くに、魔物が出るの?」
「出ますとも。王宮内は、魔王様の結界が働いていますけれどね。明日、護衛をつけてお出かけになるのがよろしいかと。リアスが行ってくれるでしょう」

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