愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます
第1章 魔王様と私-13
「あまり感心しませんが」
王宮付護衛官の騎士、リアスは、渋々私についてきてくれた。私の安全を考えてのことだというのは、分かっている。若いのに、魔界には珍しい真っ白な髪。
「できるだけ森に近付かないようにするわ」
「まあ、言い出したらきかない方だというのは、見ていれば分かりますので」
「誰のこと? 魔王様?」
「奥方様もですよ。夫婦というのは似てくるものだと言いますしね」
「そうなのかな……」
胸の奥がくすぐったくなった。何だろう、これは。
彼のことを、もっと知りたい。
「あなたが来てくださって、よかった」
隣を歩く白いマントのリアスは、しみじみとした調子で言った。
「ねぇ。聞いてもいい?」
「私に分かることでしたら」
「あなたもだけど……魔王様のために、私がここへ来たのを喜んでくれるのは、もちろん嬉しいわ。拒まれるよりはずっとね。でも、涙を浮かべる人もいるわ。あなたの今の言葉も、花嫁が来たからではなくて、私だからいいんだ、って言ってくれているように思えるの」
「それが不思議なのですか? なるほど、これはまた……」
私が悩んでいるのに、彼は微笑んでいる。
「何か知ってるのね」
「知っているといいますか……そうですね、あなたよりは多少は、あの方との付き合いが長いですから。ああ見えて、不器用なんですよ」
森の近くにさしかかった。リアスは自分が森の側に立ち、私を隠すようにして話し続けた。
「兄がよく言っていました。『あいつは、呆れるほど気が長い』と。あなたが答えを見つけるまで、いつまででも待つおつもりなのでしょう」
「いつまでも、じゃ駄目なの。私がおばあちゃんになっちゃう」
「さぞかしかわいらしい老婦人になられるでしょう」
快活な喋り方は、この緊張する場所を、暗い気持ちにならずに通り過ぎることができるようにと、配慮してくれているのだと分かった。
王宮付護衛官の騎士、リアスは、渋々私についてきてくれた。私の安全を考えてのことだというのは、分かっている。若いのに、魔界には珍しい真っ白な髪。
「できるだけ森に近付かないようにするわ」
「まあ、言い出したらきかない方だというのは、見ていれば分かりますので」
「誰のこと? 魔王様?」
「奥方様もですよ。夫婦というのは似てくるものだと言いますしね」
「そうなのかな……」
胸の奥がくすぐったくなった。何だろう、これは。
彼のことを、もっと知りたい。
「あなたが来てくださって、よかった」
隣を歩く白いマントのリアスは、しみじみとした調子で言った。
「ねぇ。聞いてもいい?」
「私に分かることでしたら」
「あなたもだけど……魔王様のために、私がここへ来たのを喜んでくれるのは、もちろん嬉しいわ。拒まれるよりはずっとね。でも、涙を浮かべる人もいるわ。あなたの今の言葉も、花嫁が来たからではなくて、私だからいいんだ、って言ってくれているように思えるの」
「それが不思議なのですか? なるほど、これはまた……」
私が悩んでいるのに、彼は微笑んでいる。
「何か知ってるのね」
「知っているといいますか……そうですね、あなたよりは多少は、あの方との付き合いが長いですから。ああ見えて、不器用なんですよ」
森の近くにさしかかった。リアスは自分が森の側に立ち、私を隠すようにして話し続けた。
「兄がよく言っていました。『あいつは、呆れるほど気が長い』と。あなたが答えを見つけるまで、いつまででも待つおつもりなのでしょう」
「いつまでも、じゃ駄目なの。私がおばあちゃんになっちゃう」
「さぞかしかわいらしい老婦人になられるでしょう」
快活な喋り方は、この緊張する場所を、暗い気持ちにならずに通り過ぎることができるようにと、配慮してくれているのだと分かった。