愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第1章 魔王様と私-24

「顔を上げろ。泣くな。これは俺の本音でもある」
 顎に指が添えられ、安堵した笑みを向けられた。
「お前と共にありたい。契約を破るのは俺だ。お前が気にすることではない」
「魔王様……」
 なぜ、そんなにまでしてくれるの?
「お前には俺の寿命を千年分け与える。どうだ? 千年の時を、その間のお前のすべての時間を、俺にくれるか? お前の……人生を」
「はい。喜んで」
 嬉しくて、涙が止まらない。
「千年、おそばに置いてください。その後は……お一人にしてしまいますけど」
「思い出が千年分もあれば、それをよすがに生き永らえることはできよう。俺があまりにも腑抜けていたら、生まれ変わって引っ叩きにくればよい。どうだ?」
「はい……できるだけ早く生まれ変わります。次は魔物に生まれれば……いつまでもご一緒にいられるでしょうか」
「お前はそのままでよい。……愛している」
 初めての、愛の言葉。もう、涙で彼の顔が見えない。
「私もです……愛しています」
 私のために二千年分の命を失う旦那様は、きつく私を抱きしめ、「ありがとう」と囁いた。その声には、涙が混じっていた。

< 24 / 40 >

この作品をシェア

pagetop