愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます
第1章 魔王様と私-27
「では、行ってまいります」
馬車に乗り込み、いざ、お掃除のし甲斐があるという迷宮へ。
「いいか。俺の名を忘れるな。頼んだぞ、レーガ」
ヒヒーンといななき、地面を蹴って、そりが出発した。
「あなたの名前、レーガっていうのね。私はジーナ。よろしくね」
左の頭がちらりと後ろを見て、ニカッと笑った。真っ赤な目が細められている。よかった、仲良くなれそう。
そりの横に走って追いついてきたのは、最初に私に飛びかかってきた魔獣。
「ペニー、あなたも来てくれたのね」
赤い瞳が強く輝く。「護衛はお任せください」と張り切っているのが感じられて、頼もしい。アンジェ様に忠実な彼らに守られて、気持ちよく揺られていく。暗いトンネル、明るい森、小川や湖。初めて足を踏み入れる場所。図書館で地図を見ていたから、方角や地名はわかる。畑のそばを通ると、作業をしていた人たちが手を止めて、お辞儀をしてくれた。
「奥方様、お気を付けてー!」
「行ってらっしゃーい!」
「ありがとう!」
アンジェ様が慈しんでいる魔界。彼が愛されているから、妻の私にもみんな優しい。心の奥が温かくなる。
……あれ? アンジェって……語源は『天使』じゃなかったっけ。魔界なのに?
その疑問は、耳のそばを通り抜ける風にさらわれていった。
馬車に乗り込み、いざ、お掃除のし甲斐があるという迷宮へ。
「いいか。俺の名を忘れるな。頼んだぞ、レーガ」
ヒヒーンといななき、地面を蹴って、そりが出発した。
「あなたの名前、レーガっていうのね。私はジーナ。よろしくね」
左の頭がちらりと後ろを見て、ニカッと笑った。真っ赤な目が細められている。よかった、仲良くなれそう。
そりの横に走って追いついてきたのは、最初に私に飛びかかってきた魔獣。
「ペニー、あなたも来てくれたのね」
赤い瞳が強く輝く。「護衛はお任せください」と張り切っているのが感じられて、頼もしい。アンジェ様に忠実な彼らに守られて、気持ちよく揺られていく。暗いトンネル、明るい森、小川や湖。初めて足を踏み入れる場所。図書館で地図を見ていたから、方角や地名はわかる。畑のそばを通ると、作業をしていた人たちが手を止めて、お辞儀をしてくれた。
「奥方様、お気を付けてー!」
「行ってらっしゃーい!」
「ありがとう!」
アンジェ様が慈しんでいる魔界。彼が愛されているから、妻の私にもみんな優しい。心の奥が温かくなる。
……あれ? アンジェって……語源は『天使』じゃなかったっけ。魔界なのに?
その疑問は、耳のそばを通り抜ける風にさらわれていった。