愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第2章 ここにいます-3

 まだ、いとけない少女だった。まばゆいばかりの温かさに、救われる心地がした。
「お前はどんな娘になるのだろうな」
「おとなにはなりません。いけにえにされるから」
「……そうか」
「でも、およめさんになれば、いけにえにはされないんですって」
「なるほどな……」
 里の娘を差し出されても、自分が人界の自然を直接支配しているわけではないのだが……。
「ならば、俺のところに来るか? 花嫁として」
「うーん……かんがえておきます」
 おませな口ぶりが愛らしかった。成長するにつれてこんな戯言は忘れてしまうだろうが、この子が大人になるのを待つのも悪くはない。

 少女が口ずさんだ歌を、彼は折に触れ思い出した。
 十五年が過ぎ、生贄の風習が再開されたと聞いて仕方なく迎えに行ってみたら、彼女がいたのだ。やはり覚えてはいないようだが、構わなかった。ジーナを愛し、愛された。
   
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