愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます
第2章 ここにいます-5
小さな妻は、幸福そうに、夫の胸に頬をすり寄せた。
「あなたの寿命は、あと十万年とお聞きしました。私は、ここの空気を一万年吸えば、魔の者になれるそうです。残りの九万年も、おそばに置いてください。いいでしょう?」
「入れ知恵されたな?」
かわいい鼻をつっついて、たしなめた。
「天の王様はおっしゃいました。『初めから、一万年分あげればよかったのに。妙に遠慮深いっていうか、臆病っていうか。もう、君が押しかけ女房になるしかないよ。あいつに君が必要なのと同じように、君にもあいつが必要なんだってこと、十万年かけてわからせてやって』って」
殴りたい。妻を、ではない。おしゃべりな友をだ。
小さな背を撫でながら、昔のことを思う。あの頃は、黒髪は膝に届くほど長く、角は生えていなかった。
「あなたの寿命は、あと十万年とお聞きしました。私は、ここの空気を一万年吸えば、魔の者になれるそうです。残りの九万年も、おそばに置いてください。いいでしょう?」
「入れ知恵されたな?」
かわいい鼻をつっついて、たしなめた。
「天の王様はおっしゃいました。『初めから、一万年分あげればよかったのに。妙に遠慮深いっていうか、臆病っていうか。もう、君が押しかけ女房になるしかないよ。あいつに君が必要なのと同じように、君にもあいつが必要なんだってこと、十万年かけてわからせてやって』って」
殴りたい。妻を、ではない。おしゃべりな友をだ。
小さな背を撫でながら、昔のことを思う。あの頃は、黒髪は膝に届くほど長く、角は生えていなかった。