愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第2章 ここにいます-6

 昔、天界を統べていたのはアンジェだった。骨の折れる仕事だが、自分が最も適していた。生を終えてやってきた者たちは、真っ白になって、次の世へと生まれ変わるのを待つ。抜き取られた彼らの思い出は、王がその身に抱えていく。幸福や愛情ばかりではない。苦悩、憎悪、数々の心残り……。それを術で昇華させ、星に変える。心身ともに消耗した。
(ジーナの記憶を抜かなかったのは、明らかに天の法を犯している。対価として『仕事』とやらを与え、特別に元の世界に戻すとは……自らの命を縮めるような真似を)
 だって君が苦しむのを見るのは気に入らないからね、という声が聞こえるようだ。あの時も、そう言っていた。真っ白な長い髪をかき上げながら。
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