愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第1章 魔王様と私-4*

「い、いやですっ」
「なぜだ。好いた男がいるのか」
「そうでは、なくっ……私、魔王様のことを何も知りませんっ」
「これから知ればよい」
 押し倒されてしまった。服も、乱れてしまっている。
「名は?」
「ジーナ……」
「よい名だ。ジーナ、受け入れてくれ……俺を」
「そん、な……あっ……」
 誰にも触れられたことのないところを……。体中が熱くなってくる。
「お願いです……今夜は、もう……」
「残酷なことを言うな」
 残酷、って……どっちが!?
 肌を隠すものはすでになく、恥ずかしくてたまらない。
「魔王さ、ま……」
「泣くな……お前の紫の瞳が涙を湛えているのは……堪える」
 なぜ泣いているのか分からない。でも、涙を止められない。
「いやか? それほどまでに俺のことが」
「分かりません……」
 分からないけど、婚礼って恋をしたからするものだと思ってた。今まで生贄になった人たちもこういうことをされたの? その人たちはどこへ? 殺されてしまったの?
 ……ううん、この人は、きっとそんなことはしない。悲しそうな目をしてる。一糸まとわぬ姿になったのを見れば、角がある以外は人間と変わりのない姿。けれどやはり魔王なのだということを、次の言葉で思い知らされた。
「すまぬが、少しばかり術を使う」
「え……あ、何っ……」 
 体がとろけていくみたい。彼の指が、私の……おそらくは彼を受け入れる場所へと差し込まれ、その指に命令されているかのように、自分が変わっていく。
「これならば……入るな」
「待ってくださいっ」
「もう、待てぬ」
「あっ……」
 貫かれた。想像を超える衝撃。脳が痺れているせいか、痛覚は鈍くなっているようだけど……圧迫感が、すごく、て――。
 意識が遠のく中で、揺さぶられ、口づけられ……頬に雫が落ちた、気がした。

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