愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます
第1章 魔王様と私-7
心が柔らかくなって、お茶のカップを手に取った。口をつけようとして……ためらった。
「どうした?」
「物語で読んだことがあるんです。その国のものを食べると、もう元の世界には戻れないって」
「帰るつもりなのか」
「それは……」
十八年も生きた場所だもの。帰れるものなら帰りたい。帰らない覚悟で、出てはきたけど。
「残念ながら、というべきか……俺にもこの国にも、そのような力はない。お前が自力で帰ろうと思えば、それを止める術はない」
「え……」
そうなの?
「だが、たやすいことではないぞ。人の世との境となる空間では、常に時空が歪み、ねじれている。どこへ飛ばされるか分からん。戻れたとしても、数百年の時が流れている可能性もある」
「……」
ゾクッとした。それじゃあ、食べ物や飲み物で引き留める必要もないんだ。
納得してお茶を飲み、果物を摘まんだ。
「おいしい」
「よかった」
「魔王様も、ほら」
ひとかけ取って、彼の口へ運んだ。びっくりした顔をした彼は、フッと微笑んで口を開け、食べてくれた。私の指についた汁まで、丁寧に舐め取っている。え、恥ずかしい。っていうか、私ったら何してるのっ。
「ありがとう」
舐めた指を大事そうに握って、甘い目で見つめてくる魔王様。魔王って何だっけ、と思ってしまう。
「どうした?」
「物語で読んだことがあるんです。その国のものを食べると、もう元の世界には戻れないって」
「帰るつもりなのか」
「それは……」
十八年も生きた場所だもの。帰れるものなら帰りたい。帰らない覚悟で、出てはきたけど。
「残念ながら、というべきか……俺にもこの国にも、そのような力はない。お前が自力で帰ろうと思えば、それを止める術はない」
「え……」
そうなの?
「だが、たやすいことではないぞ。人の世との境となる空間では、常に時空が歪み、ねじれている。どこへ飛ばされるか分からん。戻れたとしても、数百年の時が流れている可能性もある」
「……」
ゾクッとした。それじゃあ、食べ物や飲み物で引き留める必要もないんだ。
納得してお茶を飲み、果物を摘まんだ。
「おいしい」
「よかった」
「魔王様も、ほら」
ひとかけ取って、彼の口へ運んだ。びっくりした顔をした彼は、フッと微笑んで口を開け、食べてくれた。私の指についた汁まで、丁寧に舐め取っている。え、恥ずかしい。っていうか、私ったら何してるのっ。
「ありがとう」
舐めた指を大事そうに握って、甘い目で見つめてくる魔王様。魔王って何だっけ、と思ってしまう。