愛しい魔王様泣かないで!私はここにいます

第1章 魔王様と私-8

 そんな風にして、お腹が少し膨れるまで食べて、お茶を飲んだ。頭がはっきりしてきて、私は思い出してしまった。聞かなければならないことがある。
「何が聞きたい」
 布団の上で軽く握った私の拳を、彼が包む。
「聞いたら……私、今度こそ殺されるかもしれません」
「それはあり得ん。言ってみろ」
 そうかな……でも、これだけは。
「私の前にここへ来た娘たちは……どうなったのですか」
 殺されたのではなければ、どこへ。さっきの話で、何となく予想はついている。彼は、痛ましい表情を浮かべた。
「お前の前に、十人の娘がここへ来た。朝まで祭壇に放置すれば、役立たずと咎められるだろう。それで連れてきたのだが……そのうち九人は、到着した日のうちに恐怖と疲労で命を落とした。亡骸と魂は、天界の者に預けた」
「十人目……は?」
「逃げ出そうとして……時空の歪みに巻き込まれ、行方知れずだ」
「……」
「それも、もしも見つけたら頼むと、天界に託してある。見つかればよいがと願っている」
 天界と魔界って、物語だと音信不通だったり、争っていたりするけど、そうではないのかな。
 ……ということは。
「では、魔王様の花嫁となった娘は」
「お前だけだ」
 抱きしめられ、唇が重なる。まだ私から応えることはできないけれど、少し、この方のことを知ることができた。それが嬉しくて、長いキスを受け入れ続けた。
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