「レモン½で食べよ!」

 だってさ、私は意地悪で冷酷な魔女なんでしょう。
 きっと、彼の中では。
 …ううん、思い込みかもしれない。

 あの作品を書いている人は、戸田くんじゃないかもしれない。
 だけど、同一人物かもしれない。
 どちらにしても、確かめるようなことをしたら、ますます私を避けるようになるのかな。

 知られたくないんじゃないかな。

 そうだ…!
 毎日、あの魔女がどんな行動を取って、どんな人物で、どんな風に主人公に害をなすのかを、じっくり読んで、観察してみよう。
 もしもそれが、「戸田くんの思う私」なのだったならば、関係を変えるきっかけを見つけられるかもしれない。

 そして、これだ、これしかない、って言うような、証拠になるような出来事が物語の中で起こったら、その時にこそ。
 この気持ちを、ちゃんと伝えよう。

 私は、あなたの作品が大好きです、って。

 それから、…戸田くんのことが気になってます、って?
 それはさすがに急すぎるかな。
 だって理由を聞かれて、答えてみたところで信じてもらえないかもしれないんだもの。

 だって、もう戸田くんは、忘れちゃってるんじゃないかな。



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