「レモン½で食べよ!」

 諦めない、と決めているので、私は気を取り直して踵を返す。
 戸田くんが教室にいない、だとしたら行く場所は図書室かパソコンルームか、もしくはただ単にトイレに行っただけかもしれない。

 とにかく行きそうなところを回って、いなかったならばここへ戻って来れば良いだけだ。
 お昼の休み時間の間、私はいつも戸田くんの隣の席に勝手に腰掛けて持ってきた手作りのお弁当を食べ、話しかけ続けて来た。

 たまに、こちらに関心を示してくれた、と感じた話題と言えば中学校時代に私が好きだったアニメのあらすじの話や、ビーズアクセサリーのデザイン画を見せた時なんかが多かった。

 私のことを知って欲しいと言う気持ちもあったので、好きなものの話や、最近あった面白かった出来事なんかの話もしたけれど、それらには興味がないようだった。

 そのことは、はじめは哀しくも感じたけれど、途中から気にならなくなった。

 でも、一方的に私が話しているだけで、戸田くんは鬱陶しかったのだろうな、と思う。
 それどころか、近づかないで欲しい、と言われてしまうくらいだから、好意より嫌悪を持たれている可能性の方が高いのだ。

 楽観的な私でも、そのくらいのことはとっくに気が付いている。


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