「レモン½で食べよ!」
かくれんぼ
図書室についたので、在中していた図書委員の先輩に聞いて、訪れた生徒が名前を書き記すノートに、借りた鉛筆で自分の名を書き込む。
ついでに、今日の日付のところに戸田くんの名前がないかどうかを見てみる。
すると、案の定、私の名前の五つ上に走り書きされたそれを発見する。
どうやら彼が、本日の一番はじめの図書室利用者のようだ。
昼休みに入ってすぐにやって来たのではないかな、と思われた。
うちの学校の図書室はけっこう広くて、奥には天井まで届く本棚がいくつも並んでいる。
図書委員の生徒が、なるべく利用者に注意を払えるようにと、部屋の手前に数人掛けの細長いテーブルが八つほど用意されており、全て前を向いて着席するように椅子が置かれている。
その中の窓際の端っこに、戸田くんの姿はあった。
私は嬉しくなって、つい駆け寄ってしまう。
背中から、図書委員の先輩に「走らないで下さいね」と、声をかけられて、キュ、っと上履きを鳴らし減速する。
上半身だけ振り返り、ペコリと頭を下げる。
静かに、静かに。
うるさくしない。
追い出されないように、気を付けなくちゃ。
ゆっくりと歩いて、戸田くんの座っているところまで行くと、隣の椅子を引いて浅く腰掛ける。
読んでいる本から顔を上げもしない、そんな彼の顔を覗き込むと、いつもの無表情に安心する。
しかめっ面で、あっちへ行け、とは言われなかった。