「レモン½で食べよ!」
…旧約聖書、読んでる。
私も中学生の頃に、図書室の本をほとんど読んでしまって、最終的に旧約聖書を読んでいたっけ。
たくさんの本を読んだので、多分それなりに有名な文豪の本も読んだのだとは思うのだけれど、内容や表現、ストーリーの中で衝撃を受けた部分は記憶にあっても、著者名とタイトルを忘れてしまっているのだ。
やることがないから、行くとこないから、読んでいただけだったので、後々こういうもったいないことになる!
ちゃーんと、しっかり覚えていたらさ。
戸田くんに興味を持ってもらえるような話が、出来たかもしれないのに。
周りにはバレないようにしていたけれど、私には発達障害があって、脳の特性上覚えておけることに偏りがあった。
気持ち悪いとか、障害者は怖いとか、マイナスな印象を持たれないように、誰にも言わず、なるべく「普通」に振る舞えるように自分で自分の訓練をしていた。
明るくて元気で、時々衝動的で思わぬ行動を取ってしまうのは、ただテンションが高い子だから、と。
そう思ってもらえるように、いつも笑顔でいられるように心がけていた。
「ね、戸田くん。面白い?どこまで読んだ?」
「…、なんで、来るんだよ」
ー さすがに話しかけたら、嫌そうな顔をされるかと思っていたのに。
不思議そうに、その黒目がちな瞳は揺れた。