「レモン½で食べよ!」

 図書室は学校の北の方にあって、窓も開いていて涼しいし、ゆっくり読書がしたかっただろうに、申し訳ないことをしてしまった。

 私たちは、それぞれ手にした本を図書委員の先輩に貸し出しの届けを出して、夏休みまでには返却することを約束し、廊下へ出る。

 はあ、と、思いっきりため息をついたのは私の方だ。
 この高校の図書室で本を借りたのははじめてだったし、生徒たちからの視線は痛かったし、戸田くんには悪いことをしてしまったし、失敗したなあ、と凹んでいた。

 「どうしたの。…やっぱりお腹すいたんじゃないの?」
 「ううん。ごめんね、戸田くん。図書室でゆっくりしたかったよね」
 「別に。もう行こうと思ってたし」
 「…今日、変じゃない?なんで、私とお喋りしてくれるの?」
 「…もしも、君が僕のいる場所がわかったら、先入観を少し捨てようと思ってた」
 「先入観…?って、なんだっけ」
 「自販機で、飲み物くらい買って飲めば。僕は、教室に行くけど。…もう、来るなよ」

 それだけ早口で告げて、戸田くんはスタスタと私のことを置いて行ってしまった。



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