「レモン½で食べよ!」
お昼ごはんを食べても、少しばかり休憩を取ることが出来る時間が残る、時間割の中では長めに設定されている休み時間。
様子を見るくらいだったならば、いつものように冷たく追い返されずに済むかもしれない。
でもなあ、声が聞きたいんだよなあ。
それに、「もしかしたら」って言う、秘密に昨夜、気が付いた。
教えて欲しいけど、全くの別人かもしれないし、そうしたら失礼にあたっちゃったりする?
本物、同一人物だったならば、私はファンですって伝えてみよう。
…好かれてはいないけど、学校で一番、戸田くんと言葉を交わしているのは私だと思う。
もし、この勘が当たっていて、戸田くんの作品が好きだと告げたなら、「近づくな」じゃなくて、「嬉しいよ」って言ってもらえるかもしれない。
ふふふ、と笑いを嚙み殺すと、金髪に脱色した長いウェーブがかった髪を、てっぺんから肩の下まで撫でつける。
膝上まで短く仕立て直した青と黄色が主になっているチェックのプリーツスカートをパッパとはらって、ひだの形を整えた。
折り畳み式の、ラインストーンで飾り立てた小さな鏡を出すと、化粧が崩れていないかどうかをチェックして、よし!っと一人で大きな声を出して立ち上がる。
両手を広げて目の前に甲の方を向けて翳すと、水色に虹を描いたネイルが私に元気をくれた。
― 大丈夫、今日も私は可愛いもの!