「レモン½で食べよ!」
1人はホノカと言う子で、背が高くてガッシめの黒髪のショートカットだったけれど、スタイルが良いから化粧をしたら1年生の中では目立つようになった。
良く話すようになってからわかったことだけれど、ホノカは、自分自身に強い自信を持っているようで、発言が断定的だなあと感じることがあった。
けれど、年齢相応に、好きなアイドルグループを熱心に推していて、キャピキャピと騒いでいる姿は微笑ましかった。
そんなホノカは、まだ16歳だと言うのに、見た目をかえてすぐに20歳をこえている彼氏を作った。
もう1人の子は、元々可愛らしい雰囲気を持つ、ふわふわの猫っ毛を肩下まで垂らした、色白で華奢なルミだ。
中学校でホノカと一緒だったとのことで、おっとりしていそうな外見と中身は違っていて、性格はわかりやすくワガママだった。
悪口、と言うわけではなくて、男子がやってくれるのが当たり前!と言うか、うん、まあ可愛いからね! 今まで、そんな風に周りに接してもらって来ることが多かったのだと思う。
それはワガママと言うよりは、男子には甘えっこ、と言った感じで彼女には似合っていた。
それに、ルミは人の気持ちを察するのが上手で、ちょっと強引なホノカからの提案に私がパニックになってしまってまともに応えられないような時なんかには、いつだってまずはじめに私の気持ちを訊ね、優先しようとしてくれた。
そんなルミは、化粧をしてスカートを短くしただけで、学年で一番モテる女の子になった。
私は、ホノカのこともルミのことも嫌いじゃなかったし、実は同級生で仲良くしてくれる女子がいるのははじめての経験だったので、純粋に一緒にいてくれることが嬉しかった。
でも、大人になって行くスピードは人それぞれで、気が付かないうちに、私はずいぶんと追い抜かされてしまっていたみたいだった。
私はそのことに、まだ気がついていなかった。