「レモン½で食べよ!」

 普段はランキングが上位の方の短編ばかりを読み漁っていたけれど、ベッドにドサリとスマホ片手に倒れ込んだら、その勢いで親指が下にズレて画面をスクロールしていた。

 何も考えられないまま、気だるげに眺めた液晶画面には見知らぬタイトルと、だいたいのあらすじを説明する為の短くまとめられた文章が書かれていて、その中のとある一文に目を奪われた。

 これを読もう、と決め、気がつくと寝ずに朝までかけて、公開されている最新話まで全てを読破してしまっていた。

 私は、その作品を心の底から好きだと感じた。

 今でも続いている長編だけれど、日々の楽しみとして毎夜新しい話がアップロードされるのを心待ちにしていた。

 そうそう、どうしてプロフィールを確認したのかってハナシだよね!

 作品内に、怖い魔女が登場したのだけれど、その魔女の名前が、なんと「香歩」だったの!

 他のキャラクターは皆、西洋ファンタジーに出て来るようなカタカナの、外国の人のような名前ばかりだったのに、魔女の名は「香歩」だったのだ。

 ― つまり、岩井香歩、の「香歩」。

 私の名前!

 漢字も同じ組み合わせだし、読み方も「カホ」で合っていた。


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