「レモン½で食べよ!」

 私は身長が低くて、148cmしかない。
そして、戸田くんも男子の中では体が大きな方じゃなかった。
 多分、165cmよりちょっとあるかな、って感じで、体格も華奢だ。

 制服である紺色の長袖のジャケット、白い半袖シャツの上に薄手のベスト、緑のネクタイに、女子と同じ青と黄色のチェック柄のズボン。

 季節は7月で、もうすぐ夏休みがやって来るってのに暑くないのかなって、いつも思う。

 小さいのにまん丸い形の顔をしていて、鼻ぺちゃだけど、整えられていない眉の下には、一重なのに黒目がちな瞳とちょこんとした上品な薄い唇。

 美容院とか嫌いそうだし、入学してはじめて見た時から髪は伸び続けていて、今ではおかっぱになっちゃってる。
 可愛らしい人だな、って、私には見えるの。

 日焼けもしてない白い肌は、大福みたいにふわふわとしていそうで、触ってみたくなるし、太くて短い指をしてるけど、切り揃えられた爪の形は奇跡のように美しいの。

 パッと見だけの印象だと、日本人形、浮世絵の中の女性、みたいな?
 なんて言うか、不思議な雰囲気なの。
 つまりは、時代が時代だったならば、女性的な魅力を兼ね備えた美男子ってこと!

 …見た目ばっかりじゃん、って?
 だってまだ、親しく会話なんか夢のまた夢だし。
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