わんこな後輩くんに懐かれました!
私のどこが好きなの?って聞くと、目が好きだと片桐くんが答えてくれることを知っている。


でもここも、ここもと、あれもこれもみたいに迷うことなく私の好きなところを次々にあげ出して、「大好き」に着地するところが可愛くて、聞いてて照れながらも幸せだと思う。
片桐くんに「好き」や「可愛い」を惜しみなく注がれたところ、恋人が出来たことはすぐに周囲にバレるくらい「綺麗になった」と言われることが増えた。


綾美(あやみ)ちゃん、朝ですよー……」

アラームとともに自分もどこか寝ぼけた声の片桐くんに背後から抱きしめられて、ベッドが小さく軋んだ。
おはようとばかりに首筋にキスを落とされると弱い。片桐くんはそれを熟知している。

「片桐くん、おはよう……」

それ以上はおあずけとばかりに振り返って制すると、ちょっとだけつまらなさそうに彼は唇を尖らせた。
可愛くて思わず頭を撫でてしまう。

彼の従順すぎるほどの可愛いわんこっぷりは強化されたように思うけど、狼になる時間があることも確かで、私はわんこと狼とのギャップに翻弄されるように愛されながら片桐くんと過ごす日が増えた。

「ふだんから浩太くんて呼んでくれてもいいのに、抱いてるときにせがまないと呼んでくれないよね」

「それもいいんだけど」と拗ねながら、彼は私を抱きしめ直した。
恋人がいることは言えても相手の情報はお互い秘密に設定している。

うっかり職場で「浩太くん」と呼んでしまわぬように気をつけるためだ。
片桐くんは器用なのか「小田先輩」呼びが職場でブレることはない。
二人きりになると「綾美ちゃん」と下の名前で呼び、甘えてきたり甘やかされたりするのに、職場での距離感は付き合う前までと同じで周囲に互いが付き合っていると疑われたことすらない。

「結婚でもすることがあればね」

名前呼びの案件を軽くかわしたセリフのつもりだった。
けれど片桐くんは「結婚してくれるの?!」という想定以上の食いつきっぷりを見せて、そのあとのことはまあ……ご想像にお任せしたい。
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