魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「それは心強いな。だが、それにはまずお前たちが元気に育つことが必要だ。このまま健やかに暮らし、自分の道を自分で決められるようになった時……もし、お前たちがこの街やハーメルシーズ領のために戦いたいと心から思うことがあれば、我々はいつでもその志を受け入れよう。それまで、家族を大切にするようにな」
「わ、分かりました……! ありがとうございます!」
「わぁ……でっかい手。お父ちゃんのよりずっと強そう」

 すると少年たちは顔を紅潮させながら、ディクリド様の手をぺたぺたと触った後、嬉しそうに手を繋いで去ってゆく。
 後ろでほっとしつつそれを眺めていた私に、眩しそうな目で少年たちを見送った彼が言った。

「本当は、そんなことを考えずともいいのだと言ってやりたかったのだがな……。ありがとう、ひとつ誤解が解けた。行こうか」
「あ、はいっ!」

 その声に、やや悲し気な響きを見つけながらも私は促されるまま、また彼に付き従い足を動かし始めた。そんな風にこの街歩きで、私は裏表のないディクリド様の姿を目にしては、胸の中に刻みこんでいく。
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