魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 その後は街中の普通のレストランにふらりと入って食事をした。
大きな領地を治める貴族だというのに、街人と気安く接し笑顔を向けられるその姿は……どこか街の主としてより、この地の守り神のような形で人々に受け入れられているように感じた。

 この街と、彼を取り巻く空気はゆったりと優しい――。



 ……心地いい自然風と遊ぶ子供たちの歓声に、低い声が混ざる。

「……サンジュ。そろそろ起きてくれ」
(……はっ!)

 食事も済み、街の広場にある休憩用のベンチで腰掛けて話をしていたはずなのだが……私は今の状況に気付き、背筋を冷たくした。

「も、申し訳ありませんっ!」

 まさか伯爵様の肩を枕に寝こけてしまうだなんて。一応とはいえ、彼のお城で下働きを勤めている者としてあるまじきことだ。
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