魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
(12)捨てられないもの
「入るぞ」
ひと声かけてディクリド様が店内に足を踏み入れると、中からはむわっとした熱気が漂い、同時に薪を燃やすような独特の匂いが鼻を突いた。どうやら、奥の建物とこちらの店舗側はなにがしかの形で繋がっているらしい。
その時点で業種に当たりを付けていた私は、その品揃えを見てあらためて確信する。
「鍛冶のお店……ですよね?」
「ああ、そうだ。この店は工房で打った製品を直接卸している。他には、石材なども取り扱っているがな」
壁面やテーブルに飾られているのは、鉄を中心とした金属製の武具や農具。調理器具や細々とした工具などもある。
そして、ディクリド様の言う通り、大きな木箱の中に未精錬の鉄や銅などの鉱石群も置かれている。その中に私はなじみの深いものを見つけて近寄った。
「魔石……」
そこには金属鉱石とは一線を画す色合いの、紫じみた結晶がうずたかく積まれている。ところどころに土や石片が付着しているところを見ると加工前の、近隣の地で産出したものだろう。今まで知らなかったが、鉱山から掘り出したばかりのそれらがここにあるということは、ハーメルシーズ領は魔石の生産地でもあったのだ。
ひと声かけてディクリド様が店内に足を踏み入れると、中からはむわっとした熱気が漂い、同時に薪を燃やすような独特の匂いが鼻を突いた。どうやら、奥の建物とこちらの店舗側はなにがしかの形で繋がっているらしい。
その時点で業種に当たりを付けていた私は、その品揃えを見てあらためて確信する。
「鍛冶のお店……ですよね?」
「ああ、そうだ。この店は工房で打った製品を直接卸している。他には、石材なども取り扱っているがな」
壁面やテーブルに飾られているのは、鉄を中心とした金属製の武具や農具。調理器具や細々とした工具などもある。
そして、ディクリド様の言う通り、大きな木箱の中に未精錬の鉄や銅などの鉱石群も置かれている。その中に私はなじみの深いものを見つけて近寄った。
「魔石……」
そこには金属鉱石とは一線を画す色合いの、紫じみた結晶がうずたかく積まれている。ところどころに土や石片が付着しているところを見ると加工前の、近隣の地で産出したものだろう。今まで知らなかったが、鉱山から掘り出したばかりのそれらがここにあるということは、ハーメルシーズ領は魔石の生産地でもあったのだ。