魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
私の胸にふいに城の焼却炉の前で処分を待つ木箱のことが過る。
――これらがあれば、あの魔導具たちを復活させることができる。
そんな思いに駆られ、私は唇を噛むと、しばらくその場で立ち尽くす。
ディクリド様はそんな私をじっと見ていたが……いつのまにか金属音が止んでおり、私たちは奥から近づいた足音の主に気付くと、視線をそちらに集めた。
「おや、どなたかと思ったら領主殿じゃったか。こんな寂れた店によくいらっしゃった。歓迎いたそう。そちらのお嬢さんもな」
現れたのは、にこやかな微笑みを湛えたひとりの老爺だ。鍛冶師というイメージにはほど遠く細い身体つきをしていたが、背筋はぴしっと芯が通ったように真っ直ぐだ。
ディクリド様は、そんな彼に親し気に話しかけた。
「寂れた店などと謙遜を。ハーメルシーズ広しといえど、俺はお前ほどの腕を持つ鍛冶師に会ったことはないぞ、オルジ。だからこそ俺の剣を任せているのだ。すでに仕上がっているか?」
「それは光栄の極みにございますなぁ。もちろんあなた様の愛剣の整備は済んでおりますが、例のものも持って来ますかな?」
「……ああ。持って来てくれ」
――これらがあれば、あの魔導具たちを復活させることができる。
そんな思いに駆られ、私は唇を噛むと、しばらくその場で立ち尽くす。
ディクリド様はそんな私をじっと見ていたが……いつのまにか金属音が止んでおり、私たちは奥から近づいた足音の主に気付くと、視線をそちらに集めた。
「おや、どなたかと思ったら領主殿じゃったか。こんな寂れた店によくいらっしゃった。歓迎いたそう。そちらのお嬢さんもな」
現れたのは、にこやかな微笑みを湛えたひとりの老爺だ。鍛冶師というイメージにはほど遠く細い身体つきをしていたが、背筋はぴしっと芯が通ったように真っ直ぐだ。
ディクリド様は、そんな彼に親し気に話しかけた。
「寂れた店などと謙遜を。ハーメルシーズ広しといえど、俺はお前ほどの腕を持つ鍛冶師に会ったことはないぞ、オルジ。だからこそ俺の剣を任せているのだ。すでに仕上がっているか?」
「それは光栄の極みにございますなぁ。もちろんあなた様の愛剣の整備は済んでおりますが、例のものも持って来ますかな?」
「……ああ。持って来てくれ」