魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「お前を助けた際に共に引き上げたものの、返すべきかをずっと迷っていた。どうせなら、なるべくまともな形にして戻そうとオルジに頼み、機会を窺っていたのだ」

 工具たちはオルジさんの手により磨き上げられ、新品同様の輝きを取り戻している。ところどころ目立っていた傷なども修繕され、まるで作り直してもらえたかのような、完全な状態で私の前にある。
 オルジさんがどこか嬉しそうに目尻を緩めた。

「決してこれらは、高い品質のものとはいえますまいな。しかしよく使い込まれ、丁寧に手入れされたいい道具たちでした。すべての道具がこのように大事にされておれば、世の我々の仕事ももっと減るのじゃろうが……」

 そんな彼の言葉も、私には聞こえていない。置物のように体を固め、息を詰めてただじっとそれを見据えるだけだ。

「サンジュ、どうする」

 ディクリド様の手が動き、台の上にあった自身の剣を掴んで鞘から引き抜くと、綺麗になった道具の上でぴたりと構える。そして私に言い放った。

「お前が不要と言うならば、一言だ。『処分しろ』と俺に命じるがいい。それが過去との決別の証となろう」
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