魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「いいんだな? 俺は容赦なくこの道具たちを叩き切るつもりで剣を振るうぞ」
「私は……このことだけはもう先延ばしにするわけにはいかないんです。今ここで、自分がこの先どうしてゆくのか……その決着を着けたい」

 言いながら、声が擦れた。わたしはきっとひどい顔をしているだろう。でもどんなに恐ろしくても、決して逃げてはならない場面が存在するとしたら、それはきっと今だ。

「お願いします……!」
「わかった」

 思い切って頭を下げると、ディクリド様が、ランプの光を反射し鈍く光る刃をゆっくりと引いてゆく。

「やれやれ……後で弁償して下されよ」

 オルジさんが後ろに離れ、ディクリド様の掲げた刃がぴたり止まった。狙い定めた金の瞳は、今やまるで仇に出会ったかのように冷たい。

 私はそれを止めることができずに鏡のような刃の表面を見つめた。ちらりと、自分の凍り付いたような無表情が映る。震える口元、そして目尻に滲み、溜まってゆく水の粒も。
 それが怒り、悲しみ、悔しさ、喜びのいずれの感情で発したものか、考える暇もなく……。
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