魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 私は大きく頭を下げて、彼に許しを乞う。

「どうか、私に魔導具を作るお許しを。私は生涯を賭けてこの地の人々の幸せな生活を、この手で支えて行きたいのです」

 不思議と迷いなく、私はこの土地に骨を埋めたいと言えた。華やかな王都にも思い残すことはなく……この素朴な辺境の地で、一生懸命根を張って生きていきたい。

「……心強いものだな。同じ志を持つ誰かがいてくれるというのは」

 ディクリド様は噛み締めるように頷くと、私の手を取り、しっかりと握る。

「サンジュ。俺も個人的なしがらみは捨て、この領地のためあらゆる方法を試して行こうと思う。お前も俺や仲間たちと共に、このハーメルシーズ領の未来を支えていってくれるか」
「……はい、必ず!」
「かっかっか……これからのハーメルシーズ領の先行きが楽しみになりましたな」

 ディクリド様の瞳に力強い光が戻り、オルジさんが一件落着とばかりに笑う。
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