魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「本当だろうな? サンジュが姿を消した日に、お前たちがなにやら言い争っているのを見たという者もいるのだぞ。あやつには自由になる金も渡しておらず、自分の足で街を出るなど不可能だ。なのに近辺で見つからぬということは、手引きした何者かがいるとしか、考えられん」
ウドニスが疑いの視線を向けるが、兄弟はどちらも肩を竦めるだけで動揺する気配も見せない。
「愚妹の逃走を幇助したところで、私たちにはなんの利益もありません。大方、通り魔にでもどこかに連れ去られたのでは?」
「そうですよ父上。あいつがグローバス侯爵家に嫁入りすれば、ファークラーテン家の将来はより盤石なものになる。俺たちになんの理由があってそれを邪魔するなどと言えるんです? まったく理屈に合わないでしょう」
「むぅ……それもそうか」
ソエルやザドの言うことに反論の余地はなく、ウドニスは口を噤む。彼らが妹を路傍の石以下にしか思っていないことは、親である彼が一番よく知っているのだ。
やがて彼は感情を抑え、ふたりに捜索の協力を頼み込む。
「疑って済まなかったな。だが、今は早急にサンジュの行方を知り、やつを連れ戻さねばならん。お前たちも最低限の仕事だけを残して、どんな小さなものでもいい。情報を見つけ出せ」
ウドニスが疑いの視線を向けるが、兄弟はどちらも肩を竦めるだけで動揺する気配も見せない。
「愚妹の逃走を幇助したところで、私たちにはなんの利益もありません。大方、通り魔にでもどこかに連れ去られたのでは?」
「そうですよ父上。あいつがグローバス侯爵家に嫁入りすれば、ファークラーテン家の将来はより盤石なものになる。俺たちになんの理由があってそれを邪魔するなどと言えるんです? まったく理屈に合わないでしょう」
「むぅ……それもそうか」
ソエルやザドの言うことに反論の余地はなく、ウドニスは口を噤む。彼らが妹を路傍の石以下にしか思っていないことは、親である彼が一番よく知っているのだ。
やがて彼は感情を抑え、ふたりに捜索の協力を頼み込む。
「疑って済まなかったな。だが、今は早急にサンジュの行方を知り、やつを連れ戻さねばならん。お前たちも最低限の仕事だけを残して、どんな小さなものでもいい。情報を見つけ出せ」