魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ええ、わかりました」
「はいはい。その代わり見事見つけてみせたら、なんらかの褒美はくださいよ」

 それを受け入れた兄弟に、ウドニスは物分かりのいい父親面をして見せた。

「ああわかっているとも。服でも家でも女でも、なんでも好きなものを選ぶがいい。では頼むぞ……使用人たちにははっきり言って期待できん。お前たちだけが頼りだ――」

 その言葉を最後に、兄弟は部屋から出され、廊下を歩き出す。
 サンジュの捜索に人手を割いているせいか、邸内はひっそりと静かだ。人気のない邸内を進みながら、執務室から十分離れたところでザドは身体を折り、堪らないと言った様子で喉を震わせた。

「ひゃははははっ……! あのサンジュに逃げ出す度胸があるとはねぇ。慌てた親父殿のあの面、ケッサクったらなかったぜ。いやはや恐れ入った。連れ戻されたらどんな仕打ちを受けるか、考えなかったのかね?」
「さあな。そこまで考えた上でならば、もしかしすると、すでに命を絶っているかも知れんな」

 鋭い推測を口に出すと、ソエルはいつもよりわずかに早足で廊下を進む。それに微かな違和感を感じながら、ザドは下卑た笑いを浮かべた。
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