魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「あいつにそんな度胸があるとは思えねぇがなぁ……。しかし、どうせ死ぬなら一度くらい、大人の遊びを教えてやるべきだったかねぇ」
「――下品な言動は慎め」
「はは、冗談だよ」

 笑ってはいたが、ザドの瞳に宿る嗜虐的な光は消えていなかった。ソエルは眉をひそめながらもすぐに冷静な口ぶりに戻ると、サンジュの捜索において協調を訴える。

「明日からの動き方については、役割を分担しよう。お前は噂を集めて街中を探せ。私は王都からの移動経路や外部において、サンジュらしき人物を見かけたものがいないかを探っていく。情報を共有すれば、効率的に――」
「断る」

 だが、ザドはソエルの提案を遮り、唇をいやらしく歪めた。
「俺は俺のやり方で探させてもらうぜ。くく……親父はなんでもと言っていた。つまり、あいつさえ見つければ、親父に頼んであんたの継承順位を繰り下げさせることも可能ってことだろ? 俺が次期当主にするこんな美味しいチャンス、逃してたまるかよ」
「ザド、貴様……!」
「おっと……俺に喧嘩で勝てると思うなよ、お兄サマよ」
「くっ……」
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