魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)

(14)開き始めた道

 もう一度……魔導具師として新たに一歩を踏み出すことになった私がまず取り掛かったのは、処分予定だった魔導具を引き取ることだった。

「――なんだって? こいつらを全部持って行く? 領主様の許可も得た? んならまあ、好きにすりゃあいいがよ」

 ハーメルシーズ城の焼却場にて、木箱の群れを炉に放り込もうとしていたドンホリさんに事情を説明すると……リラフェンを始めとした使用人たちに手伝ってもらって、私はそれらをとりあえず女使用人の館の一角に集めた。

 そしてしばらくは、城中の下働きと兼ねる形で、空いた時間にそれらの魔導具を修繕することを始めていったのだ。

 同時にファルメルの街のオルジさんの鍛冶店に通い、これまでのお仕事で得た給与を投じて少しずつ、いずれ魔導具の材料となる術式盤を発注していった。

 術式盤というのは、魔導具にて発動する魔術の術式を記号化して刻んだ金属製の板で、これを中に組み込み、魔石と接続させることで、初めて魔導具は魔術を発動できるようになる。いわば魔導具の頭脳となる部品である。

 この材料となる金属板を作るには、精製した純度の高い銀に、魔石を酸などで溶かした溶液を何層にも塗りつけ馴染ませるという面倒な作業が必要になってくるのだが……オルジさんは文句も言わずそれを請け負ってくれた。
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