魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ディクリド様の御厚意なのです。少し前からたまに街を巡り、使われていない物件がないか探していたそうですよ。ここは、かつてある芸術家が別荘として購入したものの、満足いく出来の絵画を描き切ったことで、思い残すこともないと手放すことにしたんだとか。今の持ち主の老夫婦も、大きすぎて管理しきれず放置していたとかで、格安で譲ってくれたそうです」
「で……でも、こんなこと……駄目ですよ。特別扱いに納得できない人もいるでしょう」
どうしても受け取りがたく、私はフィトロさんに鍵を返そうとしたのだが、それはリラフェンによって阻まれた。
「ダーメ。一度受け取ったなら、もうここはあんたのものよ。観念するの」
「……リ、リラフェンには関係ないでしょう? これは私とディクリド様の問題で……」
「それが、関係あるのよね」
彼女はちっちと指を得意げに揺らすと、私の目の前でその手を広げてみせた。
「あたしもここに住むんだもの! あんたの手伝いをするためにね!」
「ええっ!?」
その指先には、私が受け取ったものと寸分変わらぬ銀の鍵が揺れている。相次ぐとんでもない報告に、私はどうにかなりそうで、彼女の肩口に縋りついた。
「で……でも、こんなこと……駄目ですよ。特別扱いに納得できない人もいるでしょう」
どうしても受け取りがたく、私はフィトロさんに鍵を返そうとしたのだが、それはリラフェンによって阻まれた。
「ダーメ。一度受け取ったなら、もうここはあんたのものよ。観念するの」
「……リ、リラフェンには関係ないでしょう? これは私とディクリド様の問題で……」
「それが、関係あるのよね」
彼女はちっちと指を得意げに揺らすと、私の目の前でその手を広げてみせた。
「あたしもここに住むんだもの! あんたの手伝いをするためにね!」
「ええっ!?」
その指先には、私が受け取ったものと寸分変わらぬ銀の鍵が揺れている。相次ぐとんでもない報告に、私はどうにかなりそうで、彼女の肩口に縋りついた。