魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 もはや言い返す気力もなく、私とリラフェンの共同生活は決定してしまった。
でも本心から言えば、私は彼女が来てくれると聞いてとても安堵している。まだまだこの地に馴染みが薄い私にとって、街を知り尽くしているリラフェンが傍に居てくれるというのは大変に心強い。

「ありがとうございます、リラフェン」
「ふん。あたしだって無理して付いてきたわけじゃないし、よしてよそんなの。でも、一緒に暮らすんだったらさ、家族みたいなもんじゃない。そろそろ対等に喋ってよ、あたしとお義兄様みたいにさ」

 実家でもずっとよそよそしい口調を貫いていたこともあり、その提案は私にとっては中々に難しいもの。
 でも、そうだ……。ふとずいぶん昔のことを思い返した。

 私がうんと幼い、まだ魔導具の勉強も始めてもいない頃。そこに居る誰かが面倒を見てくれていて……わずかな期間とはいえ、まるで普通の家族のように、私もそれに甘えることができていた気がする。
 そんなことがあったなと遠い日の記憶を掘り返しつつ、素直な気持ちで私はリラフェンに話しかけた。

「わかりました……。いいえ、わかったわ。気を使わないで喋れるよう努力してみる」
「ふふっ……それでいいわ。それじゃ、これからもよろしくね!」
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