魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
返事と共に彼女が私の身体をぎゅっと抱きしめてくれた。この子が本当の家族だったらどんなによかったか――そんな想いに目の奥がツンと刺激された。
「よかったね、リラ。ちなみにそういうことなら、僕も気兼ねせず呼び捨てしてくれていいんですよ、サンジュ」
「え、ええと……それはその、いずれ? 申し訳ありません」
その申し出はいささかハードルが高く、丁重にお断り申し上げた私の姿にリラフェンがケタケタ笑う。
「あらー、残念振られちゃって。色男が台無しね、お・に・い・さ・ま?」
「からかうなよな。それに彼女はディクリド様のお気に入りだから、邪な気持ちで声を掛けることなんてしないさ。安心してくださいね、サンジュ」
「は、はぁ……」
一部訂正した方がいい内容が含まれている気がしたが、なんだか疲れた私はそれを脇に置くと一番大事なことを尋ねておく。
「あの……ここまでしていただいて、ディクリド様にお礼を言わないわけには参りません。彼は今お城にいらっしゃるのですか?」
「それがね、残念ながら仕事で数日城を留守にするって言ったきり、愛馬を連れてどこかに消えてしまったんですよ。居場所は僕も知りません」
「よかったね、リラ。ちなみにそういうことなら、僕も気兼ねせず呼び捨てしてくれていいんですよ、サンジュ」
「え、ええと……それはその、いずれ? 申し訳ありません」
その申し出はいささかハードルが高く、丁重にお断り申し上げた私の姿にリラフェンがケタケタ笑う。
「あらー、残念振られちゃって。色男が台無しね、お・に・い・さ・ま?」
「からかうなよな。それに彼女はディクリド様のお気に入りだから、邪な気持ちで声を掛けることなんてしないさ。安心してくださいね、サンジュ」
「は、はぁ……」
一部訂正した方がいい内容が含まれている気がしたが、なんだか疲れた私はそれを脇に置くと一番大事なことを尋ねておく。
「あの……ここまでしていただいて、ディクリド様にお礼を言わないわけには参りません。彼は今お城にいらっしゃるのですか?」
「それがね、残念ながら仕事で数日城を留守にするって言ったきり、愛馬を連れてどこかに消えてしまったんですよ。居場所は僕も知りません」