魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「こらー! ちょっとそこの人、お金だけおいて帰らないでってば! 魔導具はちゃんと使用方法を守らないと安全に使えないんだから! ちょっとサンジュ、止まってないでこの人たちに説明! 店が人で溢れちゃう!」

 私は微かに潤んでいた目を擦ると、注目を集めるよう手を振り上げた。

「お買い上げになった方は、ご面倒をお掛けしますがこちらにいらして私の説明を聞いていってくださいね! 文字が読める方には使い方を記したメモをお渡ししますので、そちらを受け取って帰ってくださって結構です!」

 その後も、私たちは必死になって声を張り上げ、喉をからからにしながらお客様たちの対応を進めていった。
 目の回るような忙しさで、最後のお客様がお帰りになる時は動けないほどくたくただったけど……それでも、精一杯の感謝と笑顔でそれを見送った。
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