魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ならいいさ。リラフェンも元気にしていたか?」
「それはもう。忙しくしながらも、とても楽しそうにしていましたよ。それを見て僕も安心しました。おかげで僕も、胸を張ってあの話を受けられそうです」
「ああ。なら、先方にもこちらを一度訪ねるよう連絡しておこう」
そんなちょっとした内密の話も交えつつ、フィトロは机の上に一枚の報告書を滑らせる。
「こちらは、王都に潜ませている配下からの報告書です。お目通しください」
「ああ」
ディクリドはそれを手に取ると、子細に眺めた。
これはサンジュについての報告書で、彼女の家名から、出生と、どんな扱いを受けて育ってきたかが克明に記されている。屋敷の使用人が洗いざらいを話すほど、当主は忠誠心を保てていないらしい。予想通りろくな人物ではないようだ。
そしてその娘――サンジュ・ファークラーテン。
現ファークラーテン伯爵の第三子、長女に当たるが本妻の娘ではなく、母親は行方不明。魔導具師としての高度な教育を受けながら育つが、家族から虐待を受け続けて家庭に居場所はなく、使用人たちからも粗雑に扱われている。婚約話が持ち上がった直後に出奔し、現在に至るまで行方知れず。死体も見つかっていないため、父親である伯爵は血眼になって街中を捜索させている……。
「ふむ……」
「それはもう。忙しくしながらも、とても楽しそうにしていましたよ。それを見て僕も安心しました。おかげで僕も、胸を張ってあの話を受けられそうです」
「ああ。なら、先方にもこちらを一度訪ねるよう連絡しておこう」
そんなちょっとした内密の話も交えつつ、フィトロは机の上に一枚の報告書を滑らせる。
「こちらは、王都に潜ませている配下からの報告書です。お目通しください」
「ああ」
ディクリドはそれを手に取ると、子細に眺めた。
これはサンジュについての報告書で、彼女の家名から、出生と、どんな扱いを受けて育ってきたかが克明に記されている。屋敷の使用人が洗いざらいを話すほど、当主は忠誠心を保てていないらしい。予想通りろくな人物ではないようだ。
そしてその娘――サンジュ・ファークラーテン。
現ファークラーテン伯爵の第三子、長女に当たるが本妻の娘ではなく、母親は行方不明。魔導具師としての高度な教育を受けながら育つが、家族から虐待を受け続けて家庭に居場所はなく、使用人たちからも粗雑に扱われている。婚約話が持ち上がった直後に出奔し、現在に至るまで行方知れず。死体も見つかっていないため、父親である伯爵は血眼になって街中を捜索させている……。
「ふむ……」