魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー（ザ・マーグレーヴス・パーベヤー）

　リラフェンは今、どんな気持ちでいるのだろう。
　考えようによっては私よりずっと厳しい環境で、一緒に過ごして来た唯一の家族が自分から離れて行ってしまう。そのことに対する憂いや寂しさが、彼女にああいった態度を取らせているのか。それとも……。

「私が知ってるのはそのくらい。これ以上詳しいことを知りたいなら……そうね。男性使用人連中にでも声をかけてみたら？　もしかしたらあたしたちとは違った話が聞けるかもね」
「ありがとうございました。とても参考になりました」

　私がベラさんにお礼を言うと、彼女はふふっと笑い、私の頭を抱え込んで子供のように撫でてくれた。

「よーしよし。サンジュはよく頑張ってる。リラフェンはね、あなたが来る前少し頑張り過ぎるきらいがあったの。厳しい環境を乗り越えてきて、人とは違う感性を持って育ったからでしょうね。でもあなたが来たおかげで、彼女、気持ちが柔らかくなったわ。あなたたちはお互いにいい影響を与えてると思う。だから、この先もきっと大丈夫よ」

　そうして、肩を叩いて勢いづけてくれると、彼女は館から笑顔で私を送り出してくれた。

「またお店にも行くから、こっちにもいつでも顔を出してね！　リラフェンにもよろしく！」
「はい……！」