魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「なんせ、フィトロにはディクリド様の後ろ盾があるからな。ハーメルシーズ領はここいらじゃ一番でかく、戦力を持つ大領地だ。そことの繋がりを維持するために、寵愛を受けてる臣下のひとりを囲い込んで、立派な地位を与えてやるってのは、中々ありそうな話じゃねぇか?」

 そう言われると、その結婚話も信憑性を帯びて来るような……。

「で、でも、そうなると、リラフェンはどうなってしまうんですか……?」

 私がふと湧いた疑問を尋ねると、ドンホリさんは途端に渋面になってしまった。

「かわいそうだが、そうなりゃリラフェンとフィトロの関係は、続けられなくなっちまわなぁ……。でもしょうがねぇんじゃねぇのか? 実の兄弟ってわけでもねぇんだし、とっくにどっちも親はいねぇんだ。離れ離れで暮らす家族なんて世の中にごまんといらぁな。うちの娘もよぉ、結婚してからは親元になんて滅多に姿を見せに来やしねぇ。ったく、俺たちがどんだけ頑張って蝶よ花よと育ててやったと思ってんだか……」

 最後の方はただの愚痴になってしまったが、ドンホリさんからは、かなり核心に近い情報を聞き出すことができた。確かにこういった話をリラフェンが耳にしたとすれば……フィトロさんを遠ざけようとするのも納得がいく。
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