魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「それは少し高望みだと思いますよ。領地の方は私たちに任せ、あなたはご自分の好みの女性を娶られるがよいでしょう。いつまで経ってもあなたが結婚されないようでは、我々も気が気ではありませんし。もういい年だというのに……」
ディクリドはもう二十代の半ばを過ぎており、広大な土地を持つ領主としてはやや結婚が遅れている。そのことを常々フィトロたち臣下は心配しているのだ。
「俺のことをうるさく言うなら、お前もさっさと結婚して見せるがいい」
「僕のことはいいんですよ。あなたよりはよっぽど年下ですし、今しばらくは側で活躍を見届けていたいですしね。しかし、どうしても妥協するつもりにはなりませんか?」
ディクリドがこの年まで独り身でいた理由は、度重なる戦への出生と、結婚相手に厳しい基準を設けているからだ。それも、容姿ではなく主に精神面で。
同じ貴族といえど、国の中央で平和をのうのうと貪りながら形のない権勢を奪い合う貴族と、ディクリドのように実際に国と国との境界線を保ち、隣国がいざ軍を興したとあらば終わりの見えない戦いに臨まなければならない貴族とでは、心構えがまるで違う。
ディクリドはもう二十代の半ばを過ぎており、広大な土地を持つ領主としてはやや結婚が遅れている。そのことを常々フィトロたち臣下は心配しているのだ。
「俺のことをうるさく言うなら、お前もさっさと結婚して見せるがいい」
「僕のことはいいんですよ。あなたよりはよっぽど年下ですし、今しばらくは側で活躍を見届けていたいですしね。しかし、どうしても妥協するつもりにはなりませんか?」
ディクリドがこの年まで独り身でいた理由は、度重なる戦への出生と、結婚相手に厳しい基準を設けているからだ。それも、容姿ではなく主に精神面で。
同じ貴族といえど、国の中央で平和をのうのうと貪りながら形のない権勢を奪い合う貴族と、ディクリドのように実際に国と国との境界線を保ち、隣国がいざ軍を興したとあらば終わりの見えない戦いに臨まなければならない貴族とでは、心構えがまるで違う。