魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 そうしてそれはリラフェンもきっとわかっている。離れたくない気持ちがありながら……幸せになって欲しい気持ちが強いからこそ、ああして苦しんででも彼のことをきっぱりと拒絶しようとしている。

 だがそれはあまりにも、彼女にとって辛い選択だ。誰よりもかけがえのない人との関係を、自らの手で断とうとするなんて。

(おこがましいことかもしれないけれど……)

 私はリラフェンを想い、ファルメルの街の方へ視線を飛ばす。

 彼女に会ってたった数か月の私が、こんな大事に首を突っ込むのもおかしいし……放っておけば時間が悲しみを薄めて、やがて単なる思い出のひとつとして心の奥に仕舞われるだけなのかもしれない。でも私は、彼女のためにできることがあるのなら、なんでもしてあげたい。初めてできた、大切な友達だから……。

「サンジュ。どうした、思い詰めた顔をして」
「えっ……」
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