魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
考えてみればディクリド様には、恩を受けっぱなしだ。命を助けられ、私の進むべき道を示してもらい、魔導具店をも譲りうけ、あまつさえその爵号を店舗に借り受けたのだ。なんだか、一生かかってもこの借りは返せそうにない。
だが、彼は首を振り、なんでもないことのように言う。
「気にするな。すべて俺が自らの信念のもとに行ったこと。それがお前のためになったのなら、目的は果たされたと言っていい。さしずめ、先程の笑顔が報酬といったところだな」
そんな風に言われてしまうと、なおさらなにかして報いたいという気持ちが心の中に涌いてくる。それにあたり私がすべきことは、やはりこのままハーメルシーズ領の住民の手に魔導具を行き渡らせ、少しでも皆の生活を豊かなものにさせて笑顔を増やしていくことだろう。
そのためにも……リラフェンが元気になって、再びお店に協力してくれることは必須と言える。できれば、なるべく詳しい話を、おそらくフィトロさんと例の伯爵の娘との間を取り持ったであろうこの人に、聞いておきたい。
「……ディクリド様、実はお伺いしたいことがありまして……。フィトロさんがご結婚をなさるという噂は、本当なのですか?」
だが、彼は首を振り、なんでもないことのように言う。
「気にするな。すべて俺が自らの信念のもとに行ったこと。それがお前のためになったのなら、目的は果たされたと言っていい。さしずめ、先程の笑顔が報酬といったところだな」
そんな風に言われてしまうと、なおさらなにかして報いたいという気持ちが心の中に涌いてくる。それにあたり私がすべきことは、やはりこのままハーメルシーズ領の住民の手に魔導具を行き渡らせ、少しでも皆の生活を豊かなものにさせて笑顔を増やしていくことだろう。
そのためにも……リラフェンが元気になって、再びお店に協力してくれることは必須と言える。できれば、なるべく詳しい話を、おそらくフィトロさんと例の伯爵の娘との間を取り持ったであろうこの人に、聞いておきたい。
「……ディクリド様、実はお伺いしたいことがありまして……。フィトロさんがご結婚をなさるという噂は、本当なのですか?」