魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
 「私はどうすればいいのでしょう」――そう聞こうとして、言葉を飲み込む。

 自分で考えることが辛いからといって、なんでもかんでも彼に答えを求めていては、ずっと人を頼りにしたままだ。リラフェンは、私の大切な友達なのだから、やはり自分でできる限り悩んだ末に答えを決めて、きちんと接したい。
 その私の態度を見てなにかを察したのか、ディクリド様は自らの腹積もりを打ち明けてくれた。

「俺はフィッツがリラフェンのことをないがしろにするわけがないと信じている。仮に婚約を結ぶことになったとして、決してリラフェンに財だけを与えひとり放りだすような真似はすまいよ。妹が望むなら彼女ごと婿入り先の家に抱えてみせる――それを先方に納得させるくらいの度量は持っている。だから今回のことも心配はしていない。それで先方と関係がごたつくようなら、喜んで俺が出しゃばり、噛みついてやるさ」
(そうだ……私も、リラフェンを信じないと)

 その言葉を聞いて、私の気持ちはずいぶん軽くなった。ディクリド様がフィトロさんを信じるように、私も心配ばかりしていないで、リラフェンが自分の納得出来る道を選べるように微力ながら支えればいいのだ。彼女の話をちゃんと聞き、傍に寄り添って自分を見つめ直す手助けをしてあげれば、きっと大丈夫。
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