魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
「ディクリド様すみません。私、そろそろ……」
「そうだな。リラフェンも帰りを待っているだろう」

 空気を読んだディクリド様が、立ち上がり際に私に手を差し出そうとすると、それを遮るように、シャルビュ号が細長い顔を突き出して擦りつけてきた。

「きゃっ、どうしたの……?」
「こらシャルビュ、今日は十分遊ばせたやっただろう? まだ帰りたくないというのか……? 我儘を言うな!」

 ――ブルルルルルッ!

 シャルビュ号はそんなディクリド様に抗議するように鼻を鳴らすと、地面を(ひづめ)でドドッと踏み鳴らして見せた。

「わかったわかった。それじゃあもう少しだけ走らせてやる。済まないがサンジュ、今しばらく付き合ってくれ。珍しいことにこいつはお前を気に入ったらしい」
「そうなんですか……?」
< 209 / 485 >

この作品をシェア

pagetop