魔導具店『辺境伯の御用達』 ーThe margrave's purveyorー(ザ・マーグレーヴス・パーベヤー)
試しに私が手を近づけると、シャルビュ号は撫でて欲しいというかのように自分から頭を近づけて来る。温かみのある滑らかな毛皮は吸い付くようで、とても手触りがいい。
いつまで経ってもシャルビュ号が離れようとしないので、終いにはディクリド様が私を抱き寄せて引き離した。
「駄目だシャルビュ、サンジュはやらん。さあ、ファルメルの街まで送っていこう、ははははっ」
彼は快活な笑いを響かせて不満げなシャルビュ号の背中に私を押し上げ、後ろに跨って腹を蹴った。
たちまち、ぐんっと強い風が押し寄せ、私はまた、ディクリド様の身体に背中を押し付けられて気付いた。
この人だけには身も心も触れられることを拒まないでいられる。出会えばいつでも優しく包み込んでくれるという確信があるから。
でも、その先を考えようとしたとき、それはとても愚かなことだと悟る。彼の心は常に、ハーメルシーズの民たち全員に向けられている。それを独り占めしたいだなんて、なんて傲慢なのだ、私は。
ほのかな熱を頭の後ろの感じながら――私は、せめてこのままの関係がずっと続いて欲しいと、それだけを願った。
いつまで経ってもシャルビュ号が離れようとしないので、終いにはディクリド様が私を抱き寄せて引き離した。
「駄目だシャルビュ、サンジュはやらん。さあ、ファルメルの街まで送っていこう、ははははっ」
彼は快活な笑いを響かせて不満げなシャルビュ号の背中に私を押し上げ、後ろに跨って腹を蹴った。
たちまち、ぐんっと強い風が押し寄せ、私はまた、ディクリド様の身体に背中を押し付けられて気付いた。
この人だけには身も心も触れられることを拒まないでいられる。出会えばいつでも優しく包み込んでくれるという確信があるから。
でも、その先を考えようとしたとき、それはとても愚かなことだと悟る。彼の心は常に、ハーメルシーズの民たち全員に向けられている。それを独り占めしたいだなんて、なんて傲慢なのだ、私は。
ほのかな熱を頭の後ろの感じながら――私は、せめてこのままの関係がずっと続いて欲しいと、それだけを願った。